綜統医学

綜統医学は、昭和九年当時東大理工学部の学生だった多田政一氏が、現代医学の部分的研究を綜合して全体医学としたもので、生理学の理論が臨床に応用でき、東洋医学の全体観とも一致している。生理学の知見と東洋医学の生命観とを線合統一したものといえる。

戦後多田氏は治療の道をはなれ、政治運動に専任したため、昭和九年以来の同志である今沢武人氏が後をつぎ、綜統医学による五十年近い臨床経験を生かして、理論的深化を進め、現在「家庭医学協会」という全国組織の会長として、操体法の橋本敬三氏と同じ八十四才だが、なおカクシャクと活動している。

私がこの医学と出逢ったのは、別冊宝島執筆のため集めた資料の中に、今沢氏の「子供を中心とした家庭医術」という本があったが、締切に追われて内容を検討するヒマもなく、この医学の紹介ができないまま終ってしまった。後日読んで、明快な生理学的基盤と大胆な仮説と、東洋医学的生命観の綜合されたこ の医学のシステムを知って、すっかり夢中になってしまった。早速「家庭医学協会」の会員になって一年間勉強させて貰ったり、協会の講習会で操体法の講師をやらせて頂いたりしているが、手術の日時まで決っていた妊娠四ヶ月目のKさんの卵巣臓腫が、十日間ほどで消失したのをはじめとして、幾多の驚くような効果が上っている。身体の多くの臓器のなかで、肝臓、腎臓、脾臓が内蔵の基礎構造を形成しており、これらの臓器を悪くしないような生活をすれば、病気にならず、病気になった時には、この三つの臓器の働きをよくしてやればいい。生きていく上に絶対必要な栄養の総仕上げをする肝臓と、生体活動のあとの老廃物の跡始末をする腎臓と、身体の免疫防御力の中核をなす脾臓の働きをよくすることだ。

この簡明卒直な論理は、私の常日頃考えていた、生命とは免疫防御力(自然治癒能力)の維持安定(ホメオスターシス)に全力をあげている有機体の本質的表現であり、病気とはこの免疫防御力のおとろえや乱れにあるわけで、病気の回復はこの免疫防御力(自然治癒能力)をいかに活発・安定化させることが できるのかという問題とも共通し、しかもこの課題を現在最も望ましい形で解決している。

綜統医学の説く、肝、腎、牌の働きをよくすることは、結局免疫物質の産生能力を高め、リンパ組織を活発化して免疫防御力を高めることにつながるのだ。 方法はきわめて簡単で、快い温度で肝臓と腎臓を温め、脾臓は冷やせばいい。操体法が快い方向に身体を動かせば、歪みがとれ、身体の歪みによって、内部の生化学的レべル、あるいは器質的変化のレべルまで波及していた病的異常が回復していくという原理と、ちょうど表裏の関係にある。快い温度を与えて内臓の歪みを調整し、内臓の歪みからくる身体の歪みを元へ戻すわけだ。

身体の内外の歪みを、快感をべースにした、 誰にもできる平易なやり方で正しくする、この二つの方法は簡明平易だが、私たちにはうかがい知れない、精密きわまる生体の情報システムや一大化学コンビナートの機能を、実に巧妙に利用している。薬や手術や放射線等による過剰刺激が、時として身体の相関性や自然治癒能力を分断させたり、狂わせたりして、マイナスの逆反応を与えかねないのに比べると、安全確実な効果を発揮してくる。

瓜生良介
「心とからだの健康事典」(1991)より




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