「気持ちいい」が免疫を強くする

心や感情は人はもちろん、動物にも備わっています。それどころか、最近の科学の知見では、植物やバクテリアにさえあるとされています。快い音楽を聞かせると、お酒がおいしくなったり、 草花が長持ちしたりという話はお聞きになったことがあるでしょう。

とくに人を含め、動物の心や感情は、脳と各臓器や各組織との関連性で表われることがだんだんわかってきました。

大木幸介さんの『脳がここまでわかってきた』(光文社)や大島清さんの『快楽進化論』(角川書店)などによりますと、脳は、脳幹(延髄・橋・中脳・間脳[視床・視床下部])、小脳、大脳 (大脳辺縁系・大脳基底核・大脳新皮質)に大きく分けられます。快楽ホルモンであるドーパミンを分泌する「A10」という快楽神経=多幸神経は、脳幹の中脳から出て、大脳新皮質の前頭連合野にまで広がっています。この神経には、負の抑制が働かない性質があるようです。

心にとって最重要の場所は、知をつくりだす新皮質の前頭葉・側頭葉、情を生む大脳辺縁系と 大脳基底核、欲望から意をつくる視床下部というところです。

快感神経のA10神経は、脳幹の中脳から出て、この最重要の三部分だけを通るのです。気持ちがいいという、私たちの心の底から湧き上がってくる原始感覚(快感覚)が、ヒトの知性や創造力を活発にし、感情を豊かにし、どんなに強い意志を生みだすかが、解明され始めています。

重要なことは、脳とリトル・プレインと呼ばれる内臓神経節と、背骨の両わきに並んでいる自律神経節との密接な連絡で、免疫系と神経系とホルモン系と脈管系が相互に、神経伝達物質など を使っての情報交換で、からだ全体のバランスをとっていることがわかってきたことでした。

気持ちいいということが、病気に打ち克つうえで最重要の働きをする免疫系を活発にさせるのです。「病は気から」なのです。精神神経免疫学などという分野が新しくできているのも、こうした背景があるからです。

病気になっても、暗い気持ちに落ち込んでいくのではなく、”いい機会だから、ちょっと休養”ぐらいな軽い気持ちで、楽しいイメージを想い浮かべるのが回復の早道かもしれません。

気持ちいい、つまり「快」的条件をつくりだせれば、先ほどの話ではないですが、バクテリアや植物でさえ生命力を活性化させるのですから、人間はなおさらのことです。

最近の生命科学、とりわけ免疫学や脳科学の成果は、私の提唱する「快医学」の基盤の確かさを、すこしずつですが立証してくれています。

一九八七年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進さんの研究で、いままでは絶対変えることはできないと考えられていた遺伝子の構造を、B細胞という免疫系の細胞は、自ら遺伝子を自由に組み替えて、新たな抗体をつくり、いまだかつて出逢ったことのない強敵に立ち向かい、個体の統一を守ってくれていることが証明されました。

生命の、みごとなまでの自由自在さ、その不思議さに、いまさらながら驚かされます。

瓜生良介

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